Special Contents by Ashiya Ginbasha

Sprcial Contents06ロシア地政学リスクによる貴金属相場への影響とは?

更新:2022年2月14日

希少な貴金属の一つ、パラジウムの主要生産国であるロシア。近年、ウクライナ情勢の緊張が続いていますが、パラジウムの供給懸念から価格の高騰が起きています。 今回は、ウクライナ情勢とパラジウム、およびその他の貴金属価格の高騰との関係や、現在の状況を解説します。

緊張が続くウクライナ情勢。
貴金属相場に影響が

ロシアはパラジウムなどの金属の主要な生産国であることから、緊迫するウクライナ情勢を巡り、市場でパラジウムの供給懸念が表出しています。

ロシアは、数週間に渡ってウクライナの国境近くに数千人の軍隊を集結させており、ウクライナのNATO加盟を認めない構えです。NATO、つまり北大西洋条約機構は、ヨーロッパおよび北米の30カ国による軍事同盟であり、ヨーロッパとロシアのちょうど境目に位置するウクライナがNATOに加盟すれば、ロシアにとって大きな脅威となることが懸念されています。
ウクライナ侵攻が現実のものとなれば、当然、戦争となり、石油やエネルギーはもちろん、ガソリン車の排ガス浄化触媒に用いられるパラジウム供給に懸念があります。

このような背景から貴金属等の価格は上昇しており、今後もこの地政学リスクに対する影響から、上昇は続いていくと見られています。

なぜパラジウム相場に影響が出るか

ウクライナ情勢の緊迫により、パラジウムの価格相場はどのくらい上昇しているのか、具体的に見ていきましょう。

パラジウムの直近60日間の相場チャートを見ても分かる通り、2022年1月17日から2月2日まで顕著に上昇しています。

指標となるニューヨーク先物価格は2022年1月26日、一時、前日比9%上昇し、約4ヶ月半ぶりの高値をつけたと報じられました。日本時間の1月27日の時間外取引でも高値圏で推移し、2021年末比の上昇率は2割に達したとされています。

なぜ、ロシアのウクライナ情勢がパラジウムの価格相場に影響を及ぼすのでしょうか。その理由を3つ見ていきましょう。

1.ロシアへの経済制裁によるパラジウム供給懸念
まずパラジウムの供給は最大産地であるロシアが世界の4割以上を握っていることにあります。仮にウクライナ侵攻が現実のものとなれば、地域紛争が生じ、ロシアに対する経済制裁の強化により、パラジウムの供給が停滞するのではないかと懸念されています。これにより、パラジウムを購入する動きが高まっています。多くパラジウムの買取がされれば、されるほど市場価格は高騰します。

2.自動車触媒への需要増し
またパラジウム価格は近年、高騰を続けています。その背景としてパラジウムの需要のうち、約8割が自動車触媒である点にあります。
世界的な排ガス規制から、軽油を用いるディーゼル車の販売台数は減少する一方で、ガソリン車や、ガソリンと電気を共に用いるハイブリッドカーの需要が高まっていることから、自動車の排ガスを浄化する触媒として使用されているパラジウムの需要は高まっており、今後も伸び続けるといわれています。
このことから、特に主要な自動車関連企業はロシアからのパラジウム供給停滞という万一の事態を懸念しています。

3.パラジウムの希少性の高さ
パラジウムは、貴金属の中でも希少性が高いのが特徴です。パラジウムの生産国として、ロシアと南アフリカ共和国の2ヶ国が世界全体の約85%を占めているといわれているため、万一ロシアからの供給が滞れば、ほとんど南アフリカ共和国に頼るしかなくなります。この希少性の高さも価格高騰の要因といえます。

金をはじめその他の
貴金属相場にも影響

ウクライナ情勢の緊張状態が続いていることが、パラジウム以外の貴金属の価格高騰も引き起こしています。

●金
金は最近、インフレの高止まりを背景にインフレヘッジとして注目が集まっており、需要が増している状況です。さらにウクライナ情勢の緊迫化も手伝って、安全資産としての金に注目が集まっており、買う動きが旺盛となっています。

●プラチナ
プラチナ価格の上昇も見られています。米連邦準備理事会(FRB)による3月の早期利上げ観測から、金融引き締めに転じることを背景に伸びていることに加えて、ウクライナ情勢によるパラジウム価格急騰を受けたことも上昇要因とされています。それにはプラチナは自動車触媒としてのパラジウムの代替とする動きが進んでいることが背景にあります。

まとめ

ウクライナ情勢の緊迫が、パラジウムやその他の貴金属の価格上昇に影響する主な理由を解説してきました。この緊迫状況が続くなか、パラジウムの需要は高まっており、伸長傾向も続くと見られています。

Special Contents